ドイツのペーター・ヴォールレーベン氏は、ある時、森の中で、直径1.5メートルほどの苔むした石のようなものが円形に並んでいる場所を見つけました。それは少なくとも400年以上前に伐採されたであろう大昔のブナの巨木の切り株でした。腐らずに生きていたことが何よりも不思議でした。切り株には葉がないので日の光から栄養を吸収できない。根はずっと昔に詰まっていて、地面から糖という形で栄養を得ることができない。もちろん呼吸もできない。通常ならば飢えて死んでいたはず・・・なぜこの切り株は生き続けることができたのだろうか・・?考えられるのは、切り株の周囲に生えている別のブナの存在でした。つまり、それらのブナが、根をからめて切り株と繋がって、何世紀もの間、栄養を供給していたということしか考えられないわけです。森では、同じ種類の木の雑木林に生息する同種の木々のほとんどが根っこを介して繋がるのです。木は仲間の根と別種の根を区別して、協力を図るもののようです。時によそ者を排除するために、協力したり、時に緊密に根を絡め合い、夫婦のように一緒に死ぬようなものもあると言います。仲間同士助け合う心を植物たちも持っています。
中央ヨーロッパの針葉樹林のほとんどは植林されたものですから、そうした人工植林地では、こういうことは起こらないのだそうです。植林のときに根が傷つけられてしまうので、仲間とのネットワークを広げられないのだそうです。たいていは一匹狼として生長し、辛い一生を過ごすのだそうです。そうした植林地の樹木は100年ほどで伐採されるので、どのみち老木にまで育つことはないそうです。
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