人間の身体が細胞でできているのは当たり前に知っていることと思います。それでは、細胞って何ですか?
細胞とは、「すべての生物における基本的な構成要素であり、自らコピーをつくって増殖することができる。核と細胞質からなり、物質の出入りを調節する働きをもつ細胞膜に包まれていて、核には、その細胞の遺伝物質である染色体、リボソームをつくる核小体が含まれていて・・・」ざっとこんな感じで理解されていると思います。
答えをお伝えします。細胞のひとつひとつが生物であり、ひとつの生命体なのです。感覚的にはなかなかわかりにくいですが、「私たち人間も無数の生命体の集合体である」ということです。私たちの身体を構成している細胞のひとつひとつは独立した生命体なのです。多くの生物学者が認めている生物の定義とは、以下の3つの条件を満たすものです。
1、外界と膜で仕切られている。
2、代謝(物質やエネルギーの流れ)を行う。
3、 自分の複製を作る。
私たち人間は、複数の細胞を持った多細胞生物ですが、1個の細胞だけで存在している単細胞生物のことも、理科で習った記憶があると思います。ミカヅキモやゾウリムシ、ミドリムシなどが単細胞生物で、1個だけの細胞で生命を維持しています。細胞は、肉眼で見られるものから、顕微鏡でしか見られないものなど、大きさはさまざまです。カエルの卵は、直径が約3mmと肉眼で見られますが、人間の赤血球や白血球はそれぞれ0.007mm、0.012mmと大変小さく、顕微鏡でしか見ることができません。また、ゾウリムシの大きさは約0.25mmで、細かな点として肉眼でようやく見えるほどです。まあ、それはさておき。私たち人間の身体が無数の生命体でできあがっているように、森も無数の生命体でできあがっています。森も私たちと同じように生きているのです。森も生き物なのです。私たち人間がむやみに木を伐採したり、土を掘り起こしたりすることで、森はバランスを崩し、変化を余儀なくされます。そうして、同じ森でも時間をかけてそこに生息する樹木も移り変わっていきます。
人間の身体を構成している細胞の数は、およそ37兆個です。人間の身体に住んでいるバクテリア(細菌)の数は、100兆個以上です。私たちは『人間』という生物であって、あたかも単体で生きているような気がしていますが、実際には、バクテリアと共生している集合体なのです。人体に住むバクテリアには、ピロリ菌のようにがんを誘発するとされるものもあれば、栄養素を摂取する助けとなってくれる腸内細菌などのように人の健康維持に欠かせないものもあります。人にとってバクテリアとは、必ずしも「害をなす存在」「益をもたらす存在」と決まっているわけではなく、互いに影響を与え合って生きている関係なのです。このバランスが崩れることで、人は体調を崩したり、病気になることがわかってきました。精神的なストレスを受けると、人はお腹を壊しやすくなるものですが、それは、精神状態が腸内細菌に影響を与えているということです。逆に言えば、腸内細菌の状態を整えてあげれば、気持ちも明るくなって、精神的な健康を手に入れることができるというわけです。
すでに時代は「菌と共生」することを模索する時代になりました。人間も地球の生き物の一員なのですから、何百万年と続いてきた「菌と共生する関係性」を壊せば、私たち人間の身体や精神のバランスが崩れるということです。実験では、「無菌状態のマウスに病原性のある細菌が感染すると死亡するが、マウスに常在菌がいると死なずに済む」という報告までがなされています。
樹木には、固まって林をつくる種類もあれば、人間が植えなければ林をつくらない種類もあります。どこの野山でもマツ林(松林)は普通に見られますが、サクラ林やモミジ林はありません。これには、土壌の菌が関係しています。樹木は足元に蓄積する「土壌微生物」と相互作用しながら変化し、時間の経過とともに森を構成している樹木も移り変わっていきます。樹木も単体で存在しているのではなく、「かび」や「キノコ」などの土壌に存在する菌類と共生しながら生きているわけです。最近になって、動物も植物も、森も土も微生物によって生態系が成り立っている研究が本格的に始まりました。
森には、土壌微生物がたくさん存在しています。微生物とは目に見えないくらい小さな生物のことです。微生物には、細菌、菌類、ウイルス、微細藻類、原生動物などが含まれます。細菌はヒトの細胞の10分の1程度の大きさなので光学顕微鏡で見られますが、ウイルスは細菌よりもさらに小さく、ヒトの細胞の100~1000分の1程度の大きさです。細菌は、細胞壁、細胞膜、DNAや各種タンパク質などで構成され、一般的に生物の基本単位である細胞構造をしています。 一方ウイルスは細胞構造は有しておらず、遺伝情報であるDNA・RNAがウイルス内部に保持されている構造です。
土壌には多種多様な微生物が存在し、その数は1グラムの土壌に約100~1000万にもなるといわれています。土壌微生物は、自ら相手の微生物の生育を阻害する物質を生産し、スペースを取りあったり、エサを奪い合ったりしています。お互いに共存するものもあり、増減を繰り返すことで種類と個体数のバランスを保っています。これを土壌微生物の多様性といいます。微生物の多様性が失われ、バランスが崩れた土壌は、植物の病害や生育不良を招きます。微生物の多様性を保つことは、森や私たち人間を含めた良好な生育環境をつくる上で大切なことです。私たち人間の身体も微生物の働きによって健康を維持しているというです。
あなたは、「自然環境とお金」どちらが大切ですか?お金が無くなっても人類は絶滅しませんが、生態系が壊れたら、人間は間違いなく絶滅します。微生物、昆虫、あらゆる動物たちがいなくなれば、作物は受粉しませんし、土壌は劣化します。当然、私たちの食料もなくなります。生態系の維持とはそういうことです。昆虫がいなくなれば、間違いなく人類は絶滅します。農薬や化学肥料が微生物や昆虫を殺しています。人工的な化学物質が生態系を破壊しています。緑のない環境が精神衛生を阻害しています。森を壊せば、微生物が死にます。そうすれば私たち人間も絶滅します。すべてつながっています。私たち人間も自然の一部なのですから。
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