森には、水源涵養機能、土砂の流出防備機能、二酸化炭素の固定機能があります。生物の多様性を支えている場所であり、私たち人間の精神の安定にも重要な役割を与えてくれている。森は人間にとって有用な資源を生み出す宝庫なのです。日本の森は、日本人にとってかけがえのないものだけではなく、世界の人たちにとっても重要なものになってきました。日本の森を訪れる外国人は、ずいぶん多くなってきています。ところが現在の森は循環型資源としては、ほとんど利用されていません。美しさや水源としての役割だけなら経済とは直接的な関係は薄く、経済的価値としてしか森を見ていなければ、森の資産価値など限りなく無に近くなります。資産価値が低ければ、森は不要なのでしょうか?そう問われれば、「そんなことはない」と多くの人が答えるでしょう。しかし、世界のスタンダードは「経済中心のモノの見方」ばかりが優先される価値観が大半です。
それでも、森は災害から私たちを守ってくれています。近年、未曾有の自然災害が世界各地を襲っています。災害から私たちの身を守ってくれるもののひとつが自然の森です。自然の森は、炭素の蓄積、水源の涵養、防災、食料や木材生産などの人類の利益になる生態系の重要な基盤です。森林があることで、土砂崩れを防止してくれているのをご存じでしょうか?雨で地面が削られ、山から流れ出る土砂の量は、荒廃地、耕地、森林では全く異なります。日本で1年間に流れ出る土砂の量は、荒廃地で300トン以上、耕地で15トン、森林では2トンです。300トンとは、小学校にある25メートルプールの約半分の量です。森林は、昔から大事に受け継がれてきたものです。私たちには、それを後世に受け継いでいく責任があります。
「プラネタリーヘルス」という考え方をご存じでしょうか。「プラネタリーヘルス」とは、私たち人類の健康は、地球の健康と密接につながっていることを意識しようという考え方です。この考え方は国際会議「ワールドヘルスサミット」でも論じられ、今後の主流になっていくと考えられている概念です。私たち人間ひとりひとりが健康であるためには、地球規模のもっと広い視点に立たなくてはならないという考え方です。人も地球という大きな循環システムの中に組み込まれています。農薬や添加物が影響を与えているのは、人間に対してだけではありません。他の多くの生物を死滅させ、生態系に影響を及ぼしています。私たちも殺虫剤を使いすぎないこと、除草剤を用いないことなど、できることから始めるべきでしょう。 |