トルストイの名著「人生論」=「生命について」を単に抜粋します。
人間は理性に従って生きることで幸福になれるものだ。
健康的に楽しく天寿を全うできれば幸福ではないか?という意見があるが、幸福とはそういうものではない。「自分さえ楽しければいい、自分さえ儲かればいい、自分さえ愛されればいい」というエゴイズムを満たすことを幸福だと誤解しているようだ。自分の満足のいくことのためだけに生きているのであれば、人間の幸福とは程遠い。それは、自分の満足を求めるエゴイストは、誰からも友情を注がれることもなく、誰からも愛情を注がれることがないからである。世の中を見渡してみれば、そういうエゴイストは決して少なくない。
個人の幸福を不可能にしているものは何か?それは個人的な幸福を求める者同士の争いである。自分さえハッピーであればそれでよいという思想の先にあるのは、人間同士の足の引っ張り合い。だましあい。命の奪い合いでしかない。今こそ理性を働かせて今こそ動物的自我の幸福を手放す時だ。理性を働かせるとはどういうことだ?・・・それは愛だ。理性を突き詰めることは、愛を実践することである。愛を実践することとは、最大の幸福を獲得し、最大の恐怖から逃れる唯一の方法である。
愛とは、愛する者と愛される者に幸福をもたらす美しい活動のことではない。愛とは自分自身よりも「他の存在を好ましく思う感情」のことなのだ。みんなから愛されたい。そう君は願っているのだろう。ならば君は他者の幸福のために生きなければならない。自分を愛するのではなく、他の存在を愛さなければならない。そうすれば君には、望み通りの幸福が与えられるだろう。そして、一人一人が愛を実践できれば、われわれを脅かすあらゆるものが消え去るのだ。人間同士の空しい争いも耐え難い人生の苦痛も師の恐怖すら消滅するのである。
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